2021/01/03

インフルエンザウイルスがこの冬皆無なのは新型コロナウイルスとのウイルス干渉か?

2021年1月3日作成

インフルエンザウイルスの2020/21シーズンの減少は、ウイルス干渉ではなく、感染症対策の徹底の結果

A:この冬は世界的にインフルエンザウイルスが検出されていません

この理由を

1,今年は新型コロナウイルスが蔓延したので、ウイルス干渉でインフルエンザウイルスは感染できなかった(ウイルス干渉)のためである。

という説があります。

その例として挙げられるのがインフルエンザとRSウイルスです。

* 神奈川県衛生研究所の資料が良く揃っているので神奈川県のデータを用いて検証します。

  http://www.eiken.pref.kanagawa.jp/index.html

下のグラフで青の折れ線が神奈川県内の過去の平均です。

これを見ると1月から3月にかけインフルエンザが大流行し夏は全く消えてします。

それに対して、PSウイルスはインフルエンザが活動しない7月から年末まで感染しているように見えて、ウイルス干渉があるように見える。

しかしながら、細かく見ると、1月から3月にかけてもRSウイルスは活動している。

ともかくウイルス干渉があったとしてもそれほどハッキリしたものではない。




2,新型コロナ対策で、マスク着用・手洗い・ソーシャルディスタンス等、例年に比べ強力な感染症対策が行われたためインフルエンザウイルスは感染できなかった。(感染症対策の徹底のため)


この2つが上げられますが、どちらが妥当か検討して見ます。


B: インフルエンザウイルスの季節性

 インフルエンザは夏はほとんど検出されず、冬にかけて増大し春にかけて消滅します。年によって流行するウイルスの型は色々ですが、毎年この傾向があります。

この増減は、ウイルス干渉ではない(干渉となる他のウイルスが夏場にない)

飛沫感染のインフルエンザウイルスは、乾燥する冬場に空気中に漂いやすく、感染しやすいことが反映している。

参考資料

国立感染症研究所

週別型別インフルエンザウイルス分離・検出報告数、過去4シーズンとの比較、2016/17~2020/21シーズン

 https://nesid4g.mhlw.go.jp/Byogentai/Pdf/data4j.pdf



C: ウイルス干渉が起こるためには、少なくなるウイルスより、優勢となるウイルスの方が先に入り込んでいなければならない。

新型コロナが、他のウイルスをウイルス干渉で減らすためには、コロナウイルスが多少目立ち始める13週(3月中旬)以降、減少しなければならない。

* 気付かれないうちに2月くらいに新型コロナは日本に蔓延したと主張する方もいるが根拠は無いでしょう。

新型コロナウイルスの神奈川県での週別感染者

 5週以降(2月)検出されはじめ、15週(4月初め)にピーク、一度少なくなるが32週(8月初め)急増し、その後多少減少するが300件以上の数が毎週発生し、46週(11月初め)から急増し現在に至ります。


D:新型コロナウイルスと他のウイルス病の発生状況

* 青線は過去の平均と

*2020年の1週から51週(12月中旬)までの県域(赤折れ線)、全国(黄棒)、神奈川県(水色)の報告数


2・3月に減少しているのは例年の季節性減少(例年と同じ)と見ることができる。
 新型コロナとのウイルス干渉と見るためには、新型コロナが入ってきて拡散した時期よりは早くから減少している。

41週(10月初)以降、例年は増加するのに、検出されないのは
 新型コロナによるウイルス干渉と
 マスク・手洗い・ソーシャルディスタンスの徹底のため
   の2つの可能性がある。


E: 以下は新型コロナ流行時に、感染が減少した感染症。

  これらはウイルス干渉の可能性と感染症対策の両方の可能性

唾液、鼻水などで手指から感染。咳やクシャミによる飛沫。乳幼児が感染。


年によって若干のパターンの違いはあるもの の、年始から7月上旬頃にかけて症例数が増加し、9月頃症例が最も少なくなる季節性を示す が、流行が小さい年には、はっきりした季節性がみられないこともある。同調査で得られた患者 の年齢分布(5歳毎)では5〜9歳での発生がもっとも多く、ついで0〜4歳が多い。
小中学生に多い。咳やくしゃみなどによる飛沫感染や接触感染でうつり、6~12歳の子どもに多く発症する。



口腔粘膜および手や足などに現れる水疱性の発疹を主症状とした急性ウイルス感染症本疾患は4歳位までの幼児を中心に夏季に流行が見られる疾患であり、2歳以下が半数を占めるが、学童でも流行的発生がみられることがある。また、学童以上の年齢層の大半は既にこれらのウイルスの感染(不顕性感染も含む)を受けている場合が多いので、成人での発症はあまり多くなく、男子に多い傾向が見られる。ヒト-ヒト伝播は主として咽頭から排泄されるウイルスによる飛沫感染でおこるが、便中に排泄されたウイルスによる経口感染、水疱内容物からの感染などがありうる。便中へのウイルスの排泄は長期間にわたり、症状が消失した患者も2~4週間にわたり感染源になりうる。



F: 以下は、新型コロナの流行に関係なく、1年を通して流行した感染症。
 ウイルス干渉は考えられない。

これらは、幼児に多く、飛沫よりも接触感染(特に家庭内)で、インフルエンザとは感染形式が異なる。
ウイルス干渉があると見るのなら、これらの感染症も、減るはずであるが減っていない。
これらの感染症に対しては、マスク・ソーシャルディスタンスの効果は余りなかったからだと推測する。

発熱、咽頭炎、眼症状を主とする小児の急性ウイルス性感染症であり、数種の型のアデノウイルスによる。夏期(小規模だが冬期)に地域で流行することもあり、小規模アウトブレイクとしても、散発的にも発生する。

季節特異性が少なく年間を通じて分離される。

飛沫感染と接触感染。タオルや手・指の接触。幼児から学童に罹りやすい。


上気道炎や化膿性皮膚感染症などの原因菌としてよくみられるグラム陽性菌で、菌の侵入部位や組織によって多彩な臨床症状 を引き起こす。

患者との濃厚接触をさけることが最も重要であり、うがい、手洗いなどの一般的な予防法も励行する。

学童期の児童に多い。患者との接触による感染。兄弟など。


乳幼児、特に6 カ月から18 カ月くらいの月齢のものを、特にロタウイルスによるものをサーベイする目的で乳児嘔吐下痢症
例年初冬から増加し始め12月頃に一度ピークができた後、春にもう一つなだらかな山が でき、その後初夏までだらだらと続き、年によってはもう一度小さなピークができた後、減少していくという流行パターンをとっている。ウイルス性、特に SRSV による流行が12 月のピークを形成し、その後春のピークはロタウイルスによって形成され、腸炎ビブリオなど細菌性のものやいわゆる食中毒によるものが夏期の原因になってい る。
 すなわち、地域での散発、流行疾患として、あるいは食品媒介感染症の一部を捉えているものと考えられる。報告数から考えるとウイルス性の報告が多いため、罹患年齢は幼児及び学童期が中心となっている。
毎年秋から冬にかけて流行。感染経路は、病原体が付着した手で口に触れることによる感染(接触感染)、汚染された食品を食べることによる感染(経口感染)があります。

乳児期に罹患することが多く、突然の高熱と解熱前後の発疹を特徴とするウイルス感染症で、予後は一般に良好である

現在のところ感染経路としては、唾液中に排泄されたウイルスが経口的あるい は経気道的に乳児に感染すると考えられている

1歳未満の子ども。成人の唾液中のウイルスで。


主にD種およびE種のアデノウイルスによる疾患で、主として手を介した接触により感染する。以前は、本疾患患者を扱った眼科医や医療従事者などからの感染が多く見られたが、現在では、職場、病院、家庭内などの人が濃密に接触する場所などでの流行的発生もみられる。



発熱と口腔粘膜にあらわれる水疱性の発疹を特徴とした急性のウイルス性咽頭炎であり、乳幼児を中心に夏季に流行する。いわゆる夏かぜの代表的疾患である。

エンテロウイルス属の宿主はヒトだけであり、感染経路は接触感染を含む糞口感染と飛沫感染 である。急性期にもっともウイルスが排泄され感染力が強いが、エンテロウイルス感染としての性格上、回復後にも2 ~4週間の長期にわたり便からウイルスが検出されることがある。

主に5歳以下の乳幼児を中心に夏から秋にかけて流行する、いわゆる「夏風邪」の代表格。咳やくしゃみ、おもちゃの共有などを通じて、腸の中で増殖するエンテロウイルスに感染することで発症する。


報告患者の年齢は4歳以下の占める割合が45 ~47%であり、0歳は少なく、年齢とともに増加し、4歳が最も多い。続いて5歳、3歳の順に多く、3~6歳で約60%を占めている 2)。
患者と接触。
原因となるのはムンプスウイルスで、特に幼児~小学校低学年くらいまでの小児に多く発症する。原因となるのはムンプスウイルスで、ウイルスを持つ人との接触やくしゃみによる飛沫を浴びることなどで感染する。年間を通して感染する可能性があるが、春夏は保育園や幼稚園での集団感染によって流行しやすいといわれている。幼児~小学校低学年くらいまでの小児に多く発症するが、特に4歳以下は感染しやすい。


、晩秋から早春にかけて報告数が多くなり、罹患年齢は幼児期、学童期、青年期が中心である。病原体分離例でみると7~8歳にピークがある。本邦では従来4 年周期でオリンピックのある年に流行を繰り返してきたが、近年この傾向は崩れつつあり、1984 年と1988年に大きな流行があって以降は大きな全国流行はない
感染様式は感染患者からの飛沫感染と接触感染によるが、濃厚接触が必要と考えられており、地域での感染拡大の速度は遅い。感染の拡大は通常閉鎖集団などではみられるが、学校などでの短時間での暴露による感染拡大の可能性は高くなく、友人間での濃厚接触によるものが重要とされている。



G: 結論

インフルエンザウイルスの2020/21シーズンの減少は、ウイルス干渉ではなく、感染症対策の徹底の結果と判断できる。


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